金曜の夜に風邪を引く

決まりきらない想像の旅

◯◯デビュー

とある人に間接的に迷惑をかけられているが、その人をこちらから知っているのみで、直接モノ申す事は出来ない、と言う特殊な状況が続いていた。

しかしいよいよ我慢の限界を超えかけ、直接対決を考え、直接知っている人に相談した所、「あの人、あそこに入ってデビューしちゃったんだよね。ああなってるのはそのせい。」と聞いた。その瞬間、驚く程怒りがしぼんで小さくなってしまった。

◯◯デビュー。◯◯以前の不遇さと、◯◯以後の客観性の欠落とを同時に表す俗語。

理解は寛容を生むと常々思っているけれど、何も事態は変わっていないのに、情報一つでここまで感情が変化した事に驚いた。誰かを可哀想だと感じるのはマウンティングの極みかもしれないけれど、私の小さくなってしまった怒りが、そこにある夢のような熱を一気に冷ましかねないと思うと、怒りを持つ事自体が罪のような気すらして来た。

その迷惑行為自体も、周りからは見えにくいものの終息しつつあるとの事で、結局私はその人にとって知らない人のままになっている。

不利益を被っている怒りを、ある程度の理解も無いままに、無条件に正当だとするのは止めようと改めて思った。勧善懲悪に押し込めない方が幸せな物事は、多分いくらだってある。近い未来に冷める事が予想されるその熱が、どうかソフトランディングしますように。それまでに、その人に本物の熱が宿りますように。傲慢にも、どうしてもそう思えてならない。