金曜の夜に風邪を引く

決まりきらない想像の旅

境界線を覆う雲

以前、行きつけのバーで「人生で一度で良いから、『音楽性の違い』で解散してみたいよね」と言う話になった。実際に死ぬ程悩んでそうした人には怒られそうな話だが、そこにいた全員バンド結成の経験は無く、ただそのフレーズを口にしてみたいだけだった。

結局は男女間で言う所の「価値観の違い」で、バンドなんて集団で恋愛しているようなものなのだろうけれど、何かを選んで生きて行く限り、身を以って体験出来ない世界は無数にある。

そんな事を思っていたら、現役でバンドを組んでいる同居人が、昔のバンドメンバーと再会したらしく、「人生で一度は『再結成』をやってみたい」と言っていて、心底羨ましくなった。

結局は男女間で言う所の「復縁」なのだろうけれど、恋愛とは違うであろう微妙なその違いを、自分が体感する事は恐らくこれからも無い。

近くにありながら、内には存在し得ない無数の世界がある。色んなものを色んな人と共有していると思えていても、自分の何らかの部品と少しだけ似ているだけで、基本的には違う世界に生きているのかもしれない。

この世の地獄のような事件が実際に起こる中で、それでも生きている世界を愛すると言う事は、そこにある同一性と、曖昧な境界線とを同時に見出すと言う事なんだろう。当事者にはなれなくても、想像と感情をそこに置く。どこまでも無責任にも完全な責任者にもなれないから、せめてその曖昧さに責任を取れたら良いなと思う。