金曜の夜に風邪を引く

決まりきらない想像の旅

雲の階層

物心ついた後に初めて飛行機に乗った時、空から見た雲の階層の深さに驚いた。下から見た雲は一様に高い所にあるもので、一番低い階層が全てを覆い尽くす時、その上の世界は全く分からなくなるのだと知った。そもそも、雲の上に雲があるなんて思ってもいなかった。

高い所に行けば行く程下が見えるけれど、段々とその空気の薄さに耐えられなくなって孤独になる。高みとはそれ程に厳しく、そこに行ける体力と行こうとする意思と、行けるタイミングとの全てが揃わないと行けないんだろう。

それでも、高い所から雲の階層を数える事をずっと夢見ていたいと思う。今隣で見ている雲はこういう形をしていたんだと、常に下に見えるようになっていたいと思う。それが自分の中に根を張ってくれた目標への誠実さで、それに生かされている事への恩返しになる気がする。

隣の雲と共に生きて行くやり方もあるし、それを否定もしない。ただ、階層を数えたいと言いつつ、隣の雲と生きるだけの日々になっていないかはいつも監視するようにする。

いつか、成層圏でも呼吸したい。でももしそうなったら、また上を見るだけの話なんだろうな。いつも微かな息苦しさのある日常。でも、それで良いんだと思う。