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決まりきらない想像の旅

【映画レビュー】あの頃、君を追いかけた

あの頃、君を追いかけた[Blu-ray]

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誰の言葉かは知らないが、「私があなたを好きな事に、あなたは関係が無い」と言う言葉がとても好きだ。好意は単体だとどこまでも自己満足で、そこにいる「あなた」は心の中にいる「あなた」でしかない。相手の気持ちが自分に向いて初めて、恋は恋愛となり始める。

ただ、恋が恋で終わった時、その結晶が心に何を残すのかは、相手の反応によって変わってくるようにも思う。こっぴどく振られて嫌な思い出になるか、叶わないながらも気持ちを大事にされて昇華出来るか。

余程運の良い人でない限りは、叶わなかった恋の一つや二つ心に残っていて、何かの折に思い出す事もあるだろう。この映画は、その「何かの折」となって、それをとても優しく思い出させてくれる映画である。

思い合ってもタイミングが合わなかっただけの2人だと言ってしまえば情緒は薄れてしまうけれど、そこには確かに想いがあって、それはとても大事だった。思い出の一つ一つ、その頃感じていた事の一つ一つ、冒頭から遡って語られる形で物語は進んで行く。不器用さはすれ違い、道を違えたままにしてしまうけれど、若さとは悔いが残るもので、それも含めて縁なのだろう。

コミカルとシリアスの振れ幅が大きいからこそ、今までに見た事の無い種類のラストの優しさが際立ち、誰かの「あの頃」がこんな終わり方だったら良いんだろうなと思わせてくれるようなファンタジーだった。もうきっと会える事の無いあの人が、ヒロインのようにきっと笑っていてくれますように、願わくば、自分にも優しい気持ちを抱いてくれていたんだと思えますように。観る人の「あの頃追いかけた想い」への優しさに満ちている映画だった。